Self liner notes of “Vita Activa”

Vita Activa セルフライナーノート

0.なぜ、セルフライナーノートなのか

今まで、私は基本的に言語で自分の作品を説明しようとした事はあまり無い。あまり無いという事は、過去には何度か言語で説明を試みようとした事はあるにはあるのですが、最終的には音楽が説明になっていると考え説明するのを取りやめていたのである。それに説明するのに語彙が足りなくて言いたい事を上手く表現できないもどかしさもあり説明することを取りやめていたのであった。今回、何故セルフライナーノートを書こうとしたのは、この作品を補完する為に自身の説明があった方が作品の意図をわかりやすく提示できるのかと考えがあった。ただ、こういった行為は自己満足と表裏一体である事は言うまでも無い事ですが…

1.アルバムコンセプト

基本的に”Vita Activa”を製作する上でのコンセプトは三つ。

・160BPM
・120bar 120小節で終わる
・beats only(except few voices and synth) 音はビートのみ(若干の声とシンセを使用したもの有り)

と決め、ライブのミックスにて現場で感じた感情をその都度表現しえるように敢えて簡潔に製作しました。複雑に感情を込めた楽曲を作ることも可能であるのですが、ライブだとどうしても情報過多になり過ぎと感じてしまい、更にその情報量がお約束行為的な感情再生産ともなりかねません。演者としては、1回1回のライブに正解は無いと思っています。その都度のライブにてその時感じたものをリアルタイムに構築していく形を私としては表現したいのです。興業、芸人としての観点で考えると観客の望むものをいつも同じクオリティで提供するのがプロとしての教示と言う事になるのでしょうが、演者としての面白みが無いものをやりたくないというエゴもありますし、ライブというのは1回限りのその瞬間を表現する楽しみの場と私は捉えています。

と言う訳で、今回のアルバム”Vita Activa”は私のライブの方法論を踏まえて敢えて楽曲の骨格だけを抽出したものを集めました。このアルバムに続くものとして同コンセプトでビートを抜いた上物だけを抽出したものを作成中です。ライブ(DJ)の場で、アルバム単体だけで聴くだけでは分からなかったものが、曲と曲、ビートと上物がミックスされ、様々な解釈を想起させ、新たな解釈が生まれるものを作るパーツとしての意義を込めました。ただ、これは一つの解釈にすぎません。製作者がこう思っているから、こういう解釈でなければならないというものでもありません。DJで使うもよし、家で聴くもよし、皆さんがそれぞれの解釈で好きに作品を楽しんでいただけたら幸いであります。

2.技術的な話

このアルバムは2017年の1月の終わりから断続的に作業が進められ、その間2度のライブで作業の仕上がり具合の確認を行い、微調整を加え12月に入って最終的な形になりました。サウンドは基本的にAbleton Liveの内蔵音源Operatorとドラムサンプル+αで作っています。ミックスに関してもLive付属のエフェクターのみで処理しています。この辺の音源・エフェクターに関しては外部のものを使っても問題は無いのですが、個人的にPCを買い換える度に外部の音源も含めてやり変えないといけない手間が苦痛なのと、あれこれ選択肢を広げて収集がつかなくするより、制限のある環境でできる事を行う方が個人的にはクリエイティブに製作できると感じているからです。この制限を課す考え方はアルバムのサウンドコンセプトにも広げて取り入れられています。

アルバム収録曲”VA13.5″はOMOIDE LABELからリリースされた”JUKEしようや ~ ILLMATIC SCIENCE ~
“に提供した”VA13″のリミックス。”VA14(fast)”は未リリースのコンピに提供した曲のリミックスです。

3.Vita Activaとは

この”Vita Activa(活動的生)”というタイトルはハンナ・アーレントの「人間の条件(The Human Condition)」(1958)と言う本の独語版のタイトルから取りました。アーレントは人間(人の間でとどまるもの)を「条件付けられた存在」としての3つの能力「労働」「製作(仕事)」「行為(活動)」を定義し、西洋社会の中で人間の(必然的な生存における)条件から生まれた人間の永続的な一般的能力の分析を行っています。この「労働」「製作(仕事)」「行為(活動)」の三つの能力のヒエラルキーが古代ギリシアから現代に至る人間社会の発展(没落?)と共に変わってきた事をアーレントは訴えています。詳しくは本を読んでいただくとして、三つの能力「労働」は生きるために自ら働くこと。「製作(仕事)」は永続的に残る人工的な工作物を作り出し、「行為(活動)」は複数の人間同士の中で行われる言論などの直に行われる行為を指します。人はただ生きているだけだと生存した証を残す事は出来ない、生きた証を残すのには永続的に残る生きてない物を作る必要性がある。我々は生きている間(現存在)は必然的に時間に流されている生存している訳で、その存在を記憶に残る物を残そうと思えば形ある(死んだ)ものを作らないといけない。私という存在が私を証明する「行為(活動)」を行いその時存在した証を残すと言う意味を込めています。

長々と能書きを述べましたがそれではアルバムをお楽しみください。爆音で聴く場合はくれぐれも低音で耳にダメージを受けないように気をつけて…